想い出ぼろぽろ
7期(昭和43年卒) 真尾 征雄

 早いもので卒業してから30年になる。鹿島建設に入社して25年間は、営業所も含めてだが建設現場に直接携わってきた。現場を担当していると、工事め工程と四季の変化とがミックスして、様々な行事が行われる。現場の近くに引っ越しをするので、その周辺の観光地に足を運び、美味しい名産品を食べることも出来た。品質・安全・工程を確保し、かつ金を稼ぐにはどうしたら良いか、あの手この手を考えてそれを試みるのは楽しいものである。そして、自分が造った物が姿を表してくるのを見るのは、土木屋冥利に尽きるというものである。

 ここ5年間は支店管理部門に籍をおき、いわゆるサラリーマン生活をしている。けっして今の仕事が嫌だとか、変わりたいというのではない。それなりに面白く、自分を生かせる仕事だと思っている。ただ、生活に以前のような変化がなく、そのくせ一日が、一月が、一年が瞬く間に過ぎていく。お客さんとの打ち合わせ、社内の会議、社内の人達との会食、会社仲間とのゴルフ。気になれば休日にも出勤する、どっぷり首まで潰かった会社人間になってしまった。

 最近、記憶に残る度合いが落ちてきた。昨日の宴会の出席者や話の内容や料理等が?。これはボケめ始まりだろうか。ところが2年程前に中国に行ってきた時めことは鮮明に覚えているのである。重慶で食べた四川料理も、長江を船で下った時に見た三峡の景色も、夜行列車の中で三峡ダムの是非を夜遅くまで論じたことも。記憶に残る度合いとは、その時如何に一生懸命見たり、聞いたり、話したり、食べたりしたかによるのではないだろうか。

 女峰山麓での満天の星空、甲武信岳の麓の唐松の紅葉、平ケ岳の空を焦がす夕焼け、船形山の新緑のプナ林、トムラウシのお花畑と鳴き鬼今でも鮮明に記憶に残っているのは、−生懸命に見ていたからではないだろうか。

 10年前に蔵王のペンションでやった20周年目の同期会のことを、よく覚えている。仙台駅で会った時は一瞬誰だっけと思ったのに、各々の挨拶を聞くうちに、学生時代にタイムスリップしたようで、時の経つのも忘れてしまった。こんど30周年の同期会が開かれる。卒業以来初めて会う人も来るかもしれない会牡人間から開放されて、一生懸命見たり、聞いたり、話したり、食べたりしてこよう。新しい想い出を残すために。

平成9年OB会報NO28より抜粋