懐かしの二口峠
5期 (昭和41年卒) 櫻 洋一郎
 大学を卒業して40年、とっくに還暦を越えた仲間たちが、記念にと、9月下旬、秋保温泉に集まることとなった。

 仙台産の女房と結婚し、仙台勤務(約二年)も経験しながら、学生時代にひたすら歩き続けた二口の山々には縁がなかった。この機会を逃してはならじ、と山寺から峠越えで秋保へ、と仲間を募ったが応答無し。止むを得ず、女房と二人で行動開始。

 朝方の曇り空も10:00 山寺駅に着く頃には日が射しだす。かつて小一時間かけて歩いた道を時間を稼ぐため、タクシーを利用して10分。馬形の部落を抜けていわゆる二口林道を右に見て遊仙峡方向の道に入る。林道はゲートでシャッタウト。自転車、バイクは通り抜け可能? 数分で峠に向かう大道沢出会いに至る。タクシーの運転手君、峠まで歩くと聞いて、道が荒れてひどいから止めておけと、繰り返す。昔歩いた道だからと制止を振り切って出発。この道は新練、旧練の笹谷峠〜山寺で頻繁に使われ、よく歩き込まれ、整備された、目をつぶってでも歩けるほどの馴染みの道 ・・・・ だったはず。

 しばらく幅広い道を歩き、左二口峠への朽ちかけた道標を確認、山道に入る。手入れはされていないが、比較的わかりやすい踏み跡を進む。向こうから犬の声、きのこ採りのおじさん。大きなマッタケを数本、自慢げに。恐らく秘密の場所を知っているのだろう。峠への道を尋ねると、何とか行けるだろうとあいまい。

 道は大道沢を右左に渡り返しているが、木橋の類はまったく無し。最初のうちは5回、6回と数えていたが後は数知れず。比較的水量が少なかったため何とか靴を濡らさずに渡れたが、雨後はとても歩けたものではない。所々でロープが下がっているところは踏み跡も消えて中吊状態、女房が悲鳴を上げる。

 それでもテープのマーキングだけは数多く確認でき、道に迷う心配はない。大きな堰堤を越えたあたりから次第に沢は急に、ブナの原生林は濃くなり熊でも出そうな嫌な雰囲気。沢沿いの道は方々で崩れ落ち、高巻きせざるを得ない。案内書の所要時間2時間10分を1.5倍もかかった頃、ようやく幅広の道に出る。なんと、“県道仙台山寺線終点”の角柱が一本。

 ここからは草ぼうぼうではあるが、自動車1台ぐらいは走れるような線形のヘアピン・カーブが続き、やがて稜線へ。なぜ県道建設計画が頓挫したのか分からず。県道は国交省、林道は農水省の縦割り行政の結末か。13:10二口林道に飛び出す。二口峠の標識、林道とは別に小東岳方向への山道。

 今歩いてきた山寺〜二口峠の道はガイドブックにも出ているが手入れは全くされておらず、ハイカーは歩いていない様子。里の住民やマニアが利用しているぐらいか?古い歴史のある峠道も早晩消える運命にあるのだろうか。

 昼飯、小休止の後、秋保に向かって林道を下りだす。どこかで峠から下る旧道があるはず、と調べながら歩くがまったく痕跡無し。止むを得ず、九十九折の砂利道を延々と歩く。懐かしの神室岳、表磐司岩、日陰磐司岩の姿が美しい。谷間の原生林の中に一際目立つ杉の植林地帯。恐らく伝蔵荘のある場所のはず。

  懐かしの神室岳
日陰磐司  

 峠から30分ほど下ったところで、右手に“二口番所跡入口”の標識を確認。二,三百米脇に鬱蒼とした植林に囲まれて伝蔵荘(翠雲荘)が。昨春、OB仲間の話題に上った山小屋。たまご型ストーブと心地良さそうな板の間、昔と変わらない。

 小生も当時ずいぶん二口を歩いた割にはこの小屋の外観の記憶は薄い。8期の仲間が撮った写真の小屋(OB会報36号の写真(下))は、我々の時には既にあった筈。今の小屋はその後建てられたのか((注)実は、昔のままである)、写真を見比べると窓の形が異なる。小屋の左手50mほどのところに古い墓が数基。沢に降りる道はあるが、下流に下る道は見当たらず。

    1968年12月
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    2005年2月
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    2007年9月
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 再び林道に戻って歩き出す。時折、バイク、自転車が通り過ぎる。二口渓谷に沿って平坦な道を下る。白糸の滝付近で再びゲート。宮城県側からの自動車はここまで。

 携帯がつながったのでタクシーを呼び、更に下る。二口温泉を間近にしたあたりで16:00、タクシー到着。ようやく秋保温泉に浸かることが出来た。
平成18年OB会報NO37より抜粋