エギュー・ド・ミディ南壁レビュファルート
(クライミング@シャモニー)
8期(昭和44年卒) 佐藤 拓哉・良子
 ビレイ点の左の岩を回り込むと、目を見張る美しさの、赤い大きなフェースがはるか上まで、下ははるか雪原まで広がっていた。しかし、美しさに感動している余裕はまったくなく、すぐ、この広いフェースの真ん中に走る、指先に引っかかる程度の細いクラックを、どうやって登るのか心配になった。ここは標高3800m、エギュー・ド・ミディ南壁レビュファルートの2ピッチ目である(写真)。

レビュファルート2ピッチ目
 このルートは、伝説の名クライマー、ガストン・レビュファが19??年に初登した、シャモニーで最も有名なルート、最も美しいルートである。レビュファと言えば、人一人がやっと立てるような、針のように尖った岩塔の上に立っている写真があまりにも有名である。昔見たその写真は、今でも鮮明に記憶の中にある。それ以来、シャモニーの峰々、特にエギュー・ド・ミディは憧れの的であった。去年の9月に定年を迎えたのを記念に、アルプスでクライミングをすることにし、8月22日、シャモニーを訪れた。天候に恵まれ、毎日、ホテルから朝陽に輝くモンブランを望むことができた。

 23日、ホテルでシャモニーのガイドと落ち合い、ゴンドラを乗り継いで、ミディの対面の赤い針峰群の最高峰、プレバンの頂上まで登る。取付きの近くまでゴンドラで行くのがシャモニーのクライミングである。シャモニー最初のクライミングは、頂上直下の垂直の壁のフェースからクラックを登る5ピッチのルートである。背後のシャモニーの谷を挟んで、モンブランからミディの美しい景色を見ながらの気持ちのよいクライミングであった。

 24日は、スイス国境まで足を伸ばし、下半分がスラブ、上半分が垂壁という大きな壁の真ん中に伸びるルートを登った。このルートは、アルパインというよりはフリークライミングに近く、技術的にはかなり難しかった。穂高の屏風岩にちょっと似た感じの壁であった。

 25日と28日は赤い針峰群のアンデックスの岩を登った。アンデックス(Index)は「人差し指」という意味で、25日はその由来となった、指を突き立てたような岩塔を登った。遠くに見えるグランドジョラス北壁の景色が素晴らしかった。

 26日は対岸にドリューのある大きな氷河を2時間歩き、花崗岩のとてつもなく大きなスラブを登った。草木がほとんどない、世界一美しいスラブであった。

 28日はいよいよレビュファルートである。ミディの頂上駅でアイゼンを着け、両側が切れ落ちた雪稜を下って取付きへ向かった。他の岩場とは異なり、なぜか南壁だけが赤い色をしている。フェースに伸びるクラックを巧みに繋ぎ、バンドを左上しながらのクライミングの間中、左側にはモンブランの白い頂が、右の後ろ側にはグランドジョラスに連なる峰々の素晴らしい景色が目に飛び込んでくる。8ピッチ目、最後のピッチは左上するフレークから急なフェースの難しいピッチである。ここをなんとかクリアすると、観光客で賑わうミディの展望台に飛び出し、感動の連続であったレビュファルートの登攀を終えた。

レビュファルート3ピッチ目終了点( バックはモンブラン )
平成19年OB会報NO38より抜粋