残 念 記
4期 (昭和40年卒) 島崎 質

昨年、当面の目標であった「アルプス4000m峰20峰」を達成できたが、次の目標の設定がなかなか難しい。とりあえず70歳の記念に、残っている大物、モンブランを登るのもいいかなと思い立った。

25年続けているヨーロッパ旅行、家内がウイーンやザルツブルグに行きたいと言うので、ついでに登れる山はないかと探し始めた。ヨーロッパアルプスの東端であるチロルには4000m峰こそ無いが氷河に囲まれた岩山がたくさんある。

 調べた結果、オーストリアの最高峰であるグロスグロックナー(3798m)が最もポピュラーであることが分かった。ネットでガイドビュローを捜し、コレクティブに申し込んだ。富士山より22m高いだけだが氷河の中に屹立する立派なピークである。一般ルートはアイゼン、ヘルメット着用だがピッケルは不要。最終の山小屋から2時間弱である。7月9日、若いガイドに導かれて二人のドイツ語圏スイス人とともに登った。

グロスグロックナー(3798m) グロスグロックナー


 さて、モンブラン(4810m)。ガイドや日取りがなかなか決まらずやきもきしたが7月22日シャモニーに入り、24日出発した。ロープウエーと登山電車を乗り継いで標高2000m地点から歩き始める。かつてはあと300m上まで電車があったのだが土砂崩れで不通のままになっている。グーテ小屋(3800m)まで高差1800m登らなければならない。一応スイスで高差1600の日帰り往復はやってきたのだが甘かった。3200mまではハイキングルートで楽だがあとがきつかった。ルートは岩主体となりペースが落ちる。若いガイド(ジュリアン32歳)に何度も諦めてはどうかと問われたが受け入れるわけにはいかない。標準より1時間プラスぐらいでヘロヘロになりながらもグーテ小屋についた。1時間ほど休んだのち夕食。スープはなんとか飲み込んだが固形物は全くのどに行かず、初めて味わう疲労困憊であった。小屋では飲酒禁止というのも効いたかもしれない。

 翌朝2時起床。作っておいたアルファ米のおこわは喉を通らず、かろうじてバナナを1本押し込んだだけ。2時半、ガスの中を歩き始めたが歩は進まず。後発パーティーにどんどん追い抜かれていく。黙々と3時間ぐらい登っただろうか、緩やかなピーク、ドーム・ド・グーテ(4300m)に着いてジュリアンが「ここまでにしよう」と言う。とても抵抗できる状態ではない。あっさり踵を返した。下りは普通に歩けたけれど、登山電車の駅では登頂に成功した連中と一緒になった。

 体力が衰えたのだから仕方がない。悔いはない。山登りは続けたいけれどハードな山はもう終わりだなと意外にさばさばした気分だった。だが待てよ、1日か2日追加して1日の行動を減らせば行けるかもしれない。モンブランにはその可能性がある。今はそう思っている。

平成24年OB会報NO43より抜粋