台湾の土木遺産を訪ねて
7期(昭和43年卒) 真尾 征雄

昨年5月に7泊8日の台湾旅行を企画し、川仲間とその家族29人で訪問した。一番の目的は、戦前に日本の若い技術者「八田與一」が造った烏山頭ダムの視察と八田與一没後70周年墓前祭への参加であった。

行ってみて驚いた。昭和5年に完成した、当時東洋一の烏山頭ダムは、現在も満々と水を蓄えて嘉南平原に水を供給していた。その工事の責任者についたのが八田與一、東大土木工学科卒の技術者で、着任時は34歳の若さだった。その工事を日本では前例のないセミハイドロリックフィル工法を採用し、10年間で見事完成させた。文献で調べれば調べるほど、八田與一の技術者としての素晴らしさと共に、人間八田與一の魅力にも惹かれるものが多かった。

ダムサイトの一角に、八田與一の座像と八田夫妻のお墓があり、毎年5月8日の命日には墓前祭が欠かさずおこなわれている。今年の70周忌の参加者は、蕭万長副総統を始めとして、日台合わせて何と700人。台湾の方達が、不毛の地を大穀倉地帯に変えてくれた八田與一に今でも大きな感謝の念を注いでいることが良くわかった。公共工事不要論まで言われている我が国の昨今と比べて、この違いがどこからくるのか考えさせられた。

台湾では教科書にも載るほど有名な八田與一が、日本ではほとんど知られていないのが残念である。帰国後参加者が分担して執筆し「台湾烏山頭ダム等視察報告書」としてまとめた。少しでも八田與一のことを知ってもらえればとの思いから国立図書館、宮城県立図書館、仙台市立図書館に寄贈した。興味ある方は、是非ご覧ください。ワンゲル4期の平塚征英さん、同5期の瀬尾勝之さんも執筆しています。

八田與一墓前に献花・参拝する一行



























ダム湖「珊瑚潭」と台湾の蝶を表紙に配した報告書
平成24年OB会報NO43より抜粋