日本のクラシックルートを登る! 撮る! |
8期(昭和44年卒) 佐藤 拓哉 |
「日本のクラシックルートをシリーズでビデオを作りたい」 ・・・ ビデオ編集を生業としているクライミング仲間の想いを知ったのは7年前のことであった。「クラシックルート」という響きは、アルパインクライミングにのめり込んだ私にとっても心地よい響きであった。 記念すべき最初のルートは、誰でもが憧れる谷川岳一の倉沢衝立岩の頭まで登るルートであった。2006年6月、朝日に輝く岩壁を眺めながら、オギャー、カメラマンのSさんと3人で一の倉沢の雪渓を登っていった。雪渓を渡ってくる風は冷たく、身が引き締まる思いであった。テールリッジの滑りやすいスラブを注意深く登り、 衝立岩・中央稜の取付きに着く頃には太陽が大分高くなり、暑いくらいになっていた。見上げると、いかにも脆そうなハング帯を持つ衝立岩が頭上に覆い被さってくるようである。 真横には、自衛隊が宙吊りになった遭難者のロープを狙撃して切ったことで有名なダイレクトカンテルートのいかにも厳しそうな岩壁がすぐ目の前に見える。 中央稜は一の倉沢のメインエリアである衝立岩と烏帽子沢奥壁の丁度真ん中を、衝立岩の頭まで登るルートである。エリアの一番奥にある烏帽子沢奥壁・南稜とともに人気ルートであり、休日には1時間以上待たなければならないことも珍しくない。この日は休日には珍しく、我々だけであり、 4ピッチ目と6ピッチ目の核心部もゆったりとした気持ちでクライミングを楽しむことができた。昼前には頭まで抜けることができた。 その後、 谷川岳の一の倉沢や幽ノ沢、錫杖岳・前衛壁、黒部の巨人・丸山東壁、北穗高岳・滝谷ドーム、端牆山・大面岩、八ヶ岳・大同心、甲斐駒ケ岳赤石沢・Aフランケ、前穗高岳・屏風岩などを登り続け、7年間で19ルートのビデオ撮影をした。 最も印象深いのは、今年の夏に登った甲斐駒ケ岳赤石沢・Aフランケ・赤蜘蛛ルートである。甲斐駒ケ岳は山全体が花崗岩でできており、頂上付近は夏でも雪が積もっているように白く見える綺麗な山である。中でもAフランケと呼ばれている岩場は、写真でも分かるように、日本で最も美しい岩場であろう。 |
赤蜘蛛ルートは最も人気のあるルートである。人工登攀(アブミを使いながらの登攀)主体のルートであるが、垂直(上は浅被り)の壁に走るクラックを登る核心部の6、7ピッチ目は、現在ではフリー(アブミなどを使わず、手と足だけで登る)化されている。非常に難しいフリールートであり、ほとんどのクライマーは昔ながらのスタイルで登っている。我々はクラシックルートの撮影であり、もちろん人工登攀とした。それでも非常に厳しい登攀であり、岩小屋に戻った時にはすっかり疲れ果てていた。充実感溢れる疲れであった。 |
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赤蜘蛛ルート登攀のスナップショット ( 6 ) |
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甲斐駒の夜明け ( 4 ) |
▲ 秀嶺富士と鳳凰地蔵岳オベリスク |
▲ ご来光 |
▲ 朝焼けの甲斐駒 |
▲ 八ヶ岳ズーム |
平成24年OB会報NO43より抜粋 |