さまよえる湖
4期 (昭和40年卒) 小原 佑一

現役時代、何の気なしに読み始めたスウェーデンの探険家、スヴェン・ヘディンの中央アジア探検記「さまよえる湖」は自分の山行きに多大な影響を与えた。ヘディンは少年時代から探検家になることを夢み、北欧の寒い冬も薄着で通し、夜はよく外で寝たとか ・・・・

 自分も、いつかは「さまよえる湖」ロプ・ノールに行ってみたいと中央アジアの地図を眺めながら沙漠の旅を想像していました。しかし、1964年中国最初の原爆実験がロプ・ノールで行なわれたとの報道はものすごいショックでした。

 個人でロプ・ノールに入るのはほとんど不可能だったのですが、敦煌から西方、雅丹(ヤルダン)国家地質公園の魔鬼城まで行くシルクロードの観光ツアーが見付かり2007年秋、敦煌から玉門関を通り、荒れた道をさらに西へ。途中、人民解放軍の演習地を通過し、風化した台形の小山が連なるヤルダン地帯へ。昔の探検家はこのヤルダンの複雑な地形に行く手を阻まれてやむなく引き返した探検隊もあったとか、今は舗装された道路が一直線に地平線の彼方まで、だが一般に開放されているのはここまで ・・・・

 今度はロプ・ノールの西側から近づいてみようと地図を眺め、情報収集。最近のGoogle Earthの衛星写真によればロプ・ノール周辺に巨大な貯水池のような人工施設が新たに建設され、さらに新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠では石油、天然ガスが見付かり砂漠横断道路など開発がものすごい勢いで始まっているとの情報。


 今年になって西域南道とタクラマカン砂漠を巡る観光ツアーが催行されると言う情報をつかんで、この機会を逃したらダメかもしれないと参加を決めた。

 ヘディンの「さまよえる湖」ロプ・ノールはタクラマカン砂漠の東端、コルラとチャルクリクを結ぶ道の東側200キロ辺りにあったはずだろう。現在のタリム川はコルラの南から南東に国道218号線沿いに南下して、崑崙山脈北側、タクラマカン砂漠の南端を流れてきたチェルチュン河とつながるような形で大きな湖を形成しているみたい。

砂漠の中の大きな大きな水溜り。ヘディンの描いたスケッチの挿絵を見ても、当時のロプ・ノールはこんな景色だっただろうと想像できた。

 昔、ロプ・ノール、楼蘭、米蘭(ミーラン)の傍をシルクロードの一部(西域南道)が通っていて、その道を玄奘三蔵は天竺インドからの帰路、仏教の経典を携えて通過し、またマルコポーロもこれから向かう東方の国々を考えながら通っていったことだろう。

砂漠の風景は今も昔も変わっていないだろう。玄奘三蔵もマルコポーロもそして後世の探険家たちも同じようなこの砂漠の景色を見ながら進んでいったんだろう。

平成25年OB会報NO44より抜粋