山を登るニホンジカ
4期 (昭和40年卒) 小原 佑一

 車を美濃戸に駐いてダラダラとした柳川の北沢を赤岳鉱泉まで辿る。ここから道は硫黄岳の急な登りとなる。この斜面を下ったのは30年くらい前の積雪期だっただろうか.... 美濃戸口から阿弥陀の西稜を腰までのラッセルをし、赤岳、横岳、硫黄と縦走した後、赤岳鉱泉経由で下山。その時はここを下ればほぼおしまいとホッとした気持ちで下った。でも、今回は昔と違って、夏の日帰り山行なので荷物は軽いとは言え登りはしんどい。歳を感じる。

森林限界を超え、視界が開け硫黄から横岳に続く八ヶ岳の縦走路がよく見えてくると少しは楽となる。硫黄の山頂から北側の火口壁の先を望むと、数年前、冷たい風と霙の中入った日本一海抜の高い露天風呂といわれる本沢温泉の湯船らしきものがガレ場に見える。

2万5千の地形図によれば硫黄岳一帯は「八ヶ岳キバナシャクナゲ自生地」と記載されており、キバナシャクナゲ以外にコマクサなど多くの可憐な高山植物が咲く高山帯である。コマクサのシーズンは終わりに近くほとんどは色あせて枯れた花が多かったが、まだ少しは「駒草」の名前どおりに馬面の長いピンクの花も咲いている株を見ることが出来た。

縦走路に沿って両側には登山者の立ち入りを規制するためのロープが張られている。しかし、硫黄岳石室の縦走路を挟んだ西側斜面には規制ロープに加えて電気柵が!
(写真 1)


さらに縦走路を進んで横岳に近くなると電気柵に加えて鹿被害防止のネットまで。
(写真 2)


 最近はニホンジカが増えて山の上まで登ってくるとは聞いていたが森林限界を超えて高山植物のお花畑までとは。森林限界を超えた高山地帯といえば「ニホンカモシカ」のイメージだったのに ・・・・・・

最近の電気柵はソーラーパネルとバッテリーを組み合わせた維持管理が簡単なシステムがあるとか。それにしても山の急な斜面に杭を打って電線を張り巡らせて設置するのは大変なことだろう。
 電気柵といえば屋久島で見た「感電注意 人も猿も触ってはいけません」と猿にも向けて注意喚起した(?)看板を思い出した。(写真 3)


 横岳、赤岳と八ヶ岳の縦走路のメインを歩いて行者小屋から南沢経由で美濃戸の駐車場まで戻ってくると道路脇でニホンカモシカがのんびりと草を食べていた。ニホンジカと違ってカモシカの方が図々しいのか人をあまり恐れないようだ。 害獣として狩猟の対象となるニホンジカと特別天然記念物として手厚く保護されているニホンカモシカの差かもしれない。
 それぞれ生息数の増加によりニホンシカは低山帯から人里または高山帯への移動、ニホンカモシカは低山帯への下降移動が著しいそうだ。

八ヶ岳の裾、茅野市周辺では山麓に開発された別荘地が禁猟区になっていることもあってニホンジカの安全地帯になっているようで夜になると別荘地から周辺の過疎集落の農地に出てきて田畑を歩き回って荒らしていくようだ。(写真 4)


 2007年まで法律で雌は狩猟禁止だったのでニホンジカ全体の生息数の減少にはあまり役立っておらず、最近法改正で捕獲数が増加したといえ、今の割合でいくと2025年には現在の生息数の約2倍、500万頭にまで増加すると推定されている。この数値にはハンターの高齢化等は考慮されていないと思われる。美味しく、安く、何時でも手軽に安心して鹿肉を食べられるシステムを作って、鹿の生息数をコントロールできれば農作物、森林被害を抑えることが出来るかもしれない。

平成26年OB会報NO45より抜粋