北東北の山にて
8期 (昭和44年卒) 相原 敬

 50歳を過ぎて山登りを再開したときから、私の山の原点とも言うべき東北の山は憧憬の的でした。福島までは足を運んでいましたが、北海道や九州を優先した結果なかなか仙台以北を訪ねる機会に恵まれません。単発的に月山や鳥海、蔵王、栗駒、早池峰などに登ってから5年以上が経っていました。

相棒と相談して今年の紅葉時季に東北北部を歩くことにしました。山の候補はたくさんありましたが、とりあえず深田百名山を希望する相棒の意見に従います。数日かけてのんびり徘徊しようという目論見は、結果的に土日月の強行日程になってしまいました。あまり天候には恵まれませんでしたが、紅葉の山にどっぷり浸かった静かな心落ち着く東北の地でした。

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 金曜日の仕事を終えて北関東道から東北道に入り、栗駒山のイワカガミ平には夜半に到着しました。岩手県側からは登ったことがあるので今回は宮城県側からです。車中泊して山腹を登るときには、青空が広がって憧れの栗駒紅葉が彩やかでした。山頂直下で太陽を背にしたとき、ワンゲルに入部してまもなく先輩の加藤邦明さんに連れられて残雪の栗駒を登ったことが懐かしく思い出されました。その日のうちに雨の東北道を八幡平に移動して、藤七温泉と松川温泉を梯子したのち二日目の車中泊です。

     錦秋の栗駒山
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 八幡平はほんの少し歩いただけですが霧の高層湿原は草紅葉真っ盛りで、まるで尾瀬ヶ原を歩いているような幻想的な光景が広がっていました。はるばる群馬から来た褒美に一瞬だけさっと霧のベールがとれて、目を疑うような八幡沼の広がりに歓喜しました。現役時代に秋田駒から八幡平周辺にかけて同期の北条、濱両氏と縦走しましたが、今はすでに二人とも他界し哀惜の念に堪えません。

東北道は岩手県から秋田県に入り生涯初めて訪問する青森県津軽です。広島生まれの相棒はもとより、仙台に住んでいながら行く機会がなかった学生時代。先ずは観光スポットの十和田湖、奥入瀬渓流を散策して、紅葉に映える酸ヶ湯温泉の公共駐車場で三日目の車中泊です。

     八幡平の草紅葉
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 八甲田山は大岳までは火山性の荒々しい景観が見られますが、毛無岱エリアに入ると雰囲気が一変して志賀高原を髣髴とさせる湿原の草紅葉に木道が伸びていました。この日は小雨模様でしたので景色を楽しむことは叶いませんが、霧の中に浮かぶ静かな山の雰囲気は美的情操に満ちたものでした。最後は酸ヶ湯温泉の千人風呂でまったり幸せな時が流れるのでした。

翌日の岩木山を残して仕事の都合で急遽帰ることになり、三日間で駆け抜ける北東北の旅になってしまいました。「心のふるさと」とは言い過ぎかもしれませんが、何気に郷愁を感じる「東北の山」に古稀を迎える初老の楽しみが待っているのかも知れません。

     八甲田山大岳山頂
平成27年OB会報NO46より抜粋