古希を迎えて 10日間連続登攀
8期 (昭和44年卒) 佐藤 拓哉

 この4月に「古希」を迎えた。遠い先のことのように思っていたが、いつの間にか「還暦」は過ぎ去り、「古来希なり」と言われた年になってしまった。それに反発するように、思い切ったことをしてみようと考え、GWに「10日間連続クライミング」に挑戦した。10日間といえば、どこかで雨が降り、身体を休める日もあるだろうと思っていたところ、天気に恵まれて文字どおり10日間連続となってしまった。現役時代の夏合宿に次ぐ長丁場である。

 前の晩に横須賀を出発し、4月29日に大台ケ原(奈良県)に向かった。大台ケ原と言えば、雄大な高原のイメージが強いが、深く切れ込んだ谷には大きな岩壁がいくつかあり、魅力的なルートが何本か開かれている。今回は、鈴鹿在住の夫婦の案内で、そのうちの2本を登ることにした。

 長い林道を大台ケ原を目指して登っていったところ、目の前に急に真っ白な斜面が広がった。満開の山桜かと思ったが、近づいてみると霧氷であった。GWに、しかも紀伊半島で霧氷を見るとは想像もしていなかった。

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 青空の広がった30日には蒸篭ぐらの「ブッシュマン(6ピッチ)」を、翌1日には千石ぐらの「サマーコレクション(8ピッチ)」を登った。この地方では、切り立った岩壁を「くら」と呼ぶらしい。写真はネットで見つけたものであり、一般登山客で賑わう大蛇ぐらの展望台から、谷を挟んだ対面の蒸篭ぐらを撮ったものである。偶然にも、「ブッシュマン」を登る我々が写っていた。下の黄色の○の中の赤い服が私である。


 大台ケ原の頂上付近は熊笹に覆われたなだらかな斜面が広がり、クライミングとは別にしても、また訪れてみたい素晴らしい山域であった。夜は満天の星空となり、天体観測をしている人が何人かいた。中でもひときわ大きく、コンピュータ制御の望遠鏡をセットしている方に木星を見せてもらった。土星のように派手ではないが、木星にもリングがあることを初めて知った。

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 2日には御在所岳(三重県)の藤内壁・一の壁でショートルートを数本登った。普段は多くのクライマーで賑わうこの壁も、ウィークデイなので人が少ない。

 翌3日は天気が崩れるという予報なので、標高の低い石水渓谷・鬼が牙(三重県)に移動した。朝から厚い雲がかかり、いつ雨が降ってもおかしくない天気であり、御在所を避けたのは正解であった。再び鈴鹿の夫婦と落ち合い、岩場に向かった。こじんまりとしたスラブの岩場であるが、十分楽しむことができた。新しいルートも開拓し、孫娘の愛称をとって「リンリン」と名付けてもらった。クライミングを終え、車に乗った途端に雨が降り始めた。雨の中、再び御在所に戻った。

 4日は天気が好転したので、鈴鹿の夫婦と女性二人を加え、藤内壁・前尾根のマルチピッチルートを登った。人気ルートでいつも混むが、朝早く取り付いたので待ち時間もなく、気持ちよく登ることができた。その晩はみんなで藤内小屋に泊まった。夕食には山で採った山菜の天婦羅がたくさん出た。四日市の夜景が綺麗であった。


 5日は鈴鹿のクライマー2名が加わり、再び藤内壁・一の壁でショートルートを登った。夕方、藤内小屋でみんなと別れ、もう1泊した。昨日は賑やかであった小屋も今日は泊り客がおらず、静かな山小屋を味わうことができた。

 6日は天気が下り坂なので、近場のウサギの耳と呼ばれる岩塔を登った。小さい岩場であるが、面白いルートであった。2本登ったところで雨がポツポツきたので、クライミングを止めて下山した。車に乗った頃から雨が本格的に降り始めた。名古屋城を見学してから、小川山(長野県)に向かった。

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 7日と8日は天気が回復し、青空が広がった。鈴鹿の夫婦の他に二人のクライマーも駆けつけ、再び一緒に小川山のマルチピッチルートを2本登った。

 終わってみると、あっという間の10日間であった。山小屋に2泊した他はすべて車中泊であったが、ほとんど疲労感はなかった。どこに行っても温泉があるのも日本の山の良さであり、疲れも取れる。目標の10日間連続クライミングが達成でき、まだ当分やれるという自信がついた。今年のクライミング日数は80日を超えそうであり、スキー、ハイキングを加えると90日を超える。

平成28年OB会報NO47より抜粋