鷹取山から二子山中央稜まで
33期 (平成6年卒) 星 征雅

 東京の大学では山岳部OBが監督やコーチという形で現役に関わり続けているが、私の現役時代にはOBとの接点は皆無に等しかった。いつの頃からか新橋亭での新年会の案内を送付いただくようになったが、自分には関係ない世界という気持ちで過ごしてきた。

 前回、「平成卒は会費半額」という案内をいただき、自分の育った部のルーツを知ってみたいという気持ちになり、卒業23年目にして初めてOBの集まりに出席した。その新年会の場で8期の佐藤さんと知り合い、毎週クライミングに行っているお話に刺激を受けた。また、宴席の締めで円陣を組んで部歌を歌った時、その歌い方が自分の現役の時と全く同じであることを体験し、同じ伝統の中で育った人がこんなにたくさんいたんだ、ということに感銘を受けた。

 横須賀在住の佐藤さんと、逗子の私の家の中間にクライミングのゲレンデとして有名な鷹取山がある。佐藤さんにお誘いいただき、初めて鷹取山でクライミングをした。高さのある南面フランケや、基礎的なムーブを学べる電光クラックを楽しんだ。

 佐藤さんは勤務先の若者をクライミングの世界に引き込んでいたが、その他に岩場で知り合ってレクチャーした人を仲間に加えて、佐藤さんを中心とした集団が出来上がっていた。私もそのメンバーに加えていただき、鷹取山に始まって、小川山、城ケ崎、城山と連れて行っていただいた。


 11月12日(日)、二子山中央稜を企画いただいた。メンバーは4人。リーダーの佐藤さんと、佐藤さんの会社の若いクライマー具志堅さん、私の岩稜歩きのパートナーの竹内さん、そして私の4人だ。早朝、東戸塚駅で待ち合わせ、佐藤さんの車で奥秩父へ。天気は快晴。登る岩場が見えてくると気持ちが盛り上がる。

 9時過ぎに車道に車を停めて、装備を身に付けて歩き出す。程なく取り付きに着いたが、待っているパーティーが予想以上に多かった。近くの岩場で時間つぶしをしたりで、結局、取り付けたのは11時。2時間近い待ち時間であった。

 切り立った石灰岩の岩場は、手も足も置きやすく、それほど苦労なく登れる。1パーティー目は具志堅さんがリードで佐藤さんがアドバイスしながら続く。2パーティー目は竹内さんがリードで私が回収しながら登る。順調に1ピッチ目を終えたが、テラスには先行していた数パーティーが滞留していた。セルフビレイを取って他パーティーと会話して過ごす。ここでの待ち時間も1時間くらい。全部で6〜7ピッチあるので、山頂までは相当時間がかかりそうである。

 2ピッチ目、具志堅/佐藤Pは難しい直登ルートを行った。具志堅さんは外岩は初リードだが、ジムでは5.13を登るという上級クライマーだ。登り方が洗練されていて、見る人には難しさを感じさせないまま、するすると登って行った。

 竹内/星Pは左の一般ルートを行く。竹内さんとはここ数年、北鎌・北穂東稜・前穂北尾根・明神南西稜など岩稜を一緒に歩いてきた。少し前から佐藤さんの集まりに加わり、急速に腕を磨いている。上の大テラスまで2ピッチ。クラック沿いに、一番難しい所で5.9か5.10aくらい。高度感はあったが、私のような万年初級クライマーにも無理なく登れるルートであった。

 大テラスでパーティーの順番を入れ替え、先に上がる。先行パーティーの落石が当たった。混んでいる直登の壁で真下にいるのは危ないな、と再認識。残り3ピッチで岩場を抜けた。二子山の山頂に人がいるのが見えた。ちょうど太陽が向こうの稜線に沈むところだった。

 我々は山頂へは寄らず、このまま登ってきたところを懸垂下降で下ることにした。ヘッデンを準備し、後続の2パーティーとすれ違いながら懸垂下降を始める。つないだロープを二組使い、セッティングと回収を効率的に行った。最後は暗闇の中の空中懸垂もあり、なかなか面白かった。

 久しぶりだったが、やはり外岩のマルチピッチは楽しい。このような機会を与えてくれた佐藤さんに感謝。佐藤さんは周囲の社会人だけではなく、部員数が減って技術の継承が難しくなったTUWV現役のために、仙台まで赴き指導をされている。時間も費用もかかることで、なかなかできることではない。

 個人ではなくOB会とし現役を盛り上げていくことができればと思う。クライミングを続けている方には体で、続けていない方には費用面で支援いただき、東京にある大学と同じように現役とOBがつながる実力と魅力ある部に盛り上げていければと、この場を借りて提案する。

平成29年OB会報NO48より抜粋