飛騨尾根を登攀してジャンダルムへ
8期 (昭和44年卒) 佐藤 拓哉

 今年の夏は異常な猛暑が続いた。黒部の巨人、丸山東壁を登る計画を立てたが、あまりの暑さに、標高の高い涼しいところへ行こうということになり、8月4~6日に鈴鹿のクライミング仲間3人と、新穂高温泉-西穂-飛騨尾根(登攀)-ジャンダルム-奥穂-白出沢-新穂高温泉と周回することにした。約18年ぶりの縦走である。

 初日はロープウェイで西穂山荘までの楽な登りである。実質的には中日だけがハードである。翌朝3時に小屋を出た。1時間余りの登りで独標に着くと、ガスが晴れ始め稜線が見えてきた。ピラミッドピークから岩稜が続き、小ピークをいくつも越えていく。2時間40分で西穂高岳に到着した。展望を楽しんでいると順に登ってくる登山者で狭い山頂が賑やかになってきた。半数は奥穂へ縦走するようだ。縦走路は、ミヤマアキノキリンソウ、イワギキョウ、チシマギキョウ、トウヤクリンドウ、イワツメクサなどが咲いていた。

 間ノ岳、天狗の頭と順調に越えてきた。天狗のコルコブの頭までの登り返しに時間がかかり、体力のなさを実感した。10時20分、コブの頭にやっと到着した。登攀に不要なものをデポし、ガラガラと崩れるαルンゼを、飛騨尾根に向かって降りた。途中、30mの懸垂下降をし、T3の基部へトラバース気味に下降した。

 T3からジャンダルムに向かい、ほとんど稜線に沿って登攀した。所々に古いハーケンが残置されており、カムがなくても登ることができるが、念のため要所ではカムも使った。青空に向かっての登攀は快適そのものである。傾斜はきつくなく、スタンスやホールドは豊富なので、持ってきたクライミングシューズは使わず、アプローチシューズで登った。数ピッチの登攀でジャンダルムのてっぺんに立った。16時過ぎに奥穂高岳に到着した。時間が遅いのでもう誰もいなかった。

 最終日は奥穂小屋の裏から急峻でガレ場続きの白出沢を一気に下った。下るにつれて気温が上がり、暑くなった。それよりも、18年ぶりの長い下りに脚がすっかり悲鳴をあげてしまった。

飛騨尾根の登攀
飛騨尾根からジャンダルム
奥穂からジャンダルム(右が飛騨尾根)
笠ヶ岳に沈む夕日
平成30年OB会報NO49より抜粋