くろがね小屋に泊まる
8期 (昭和44年卒) 相原 敬
 あれが阿多多羅山 あの光るのが阿武隈川

 智恵子抄の「樹下の二人」でも知られる安達太良山は、見所が多くバラエティーに富んだ山として人気が高い。深田百名山であると共に、田中澄江氏の花の百名山としても知られる。

 もちろん現役時代に登頂しているが、卒業後もOB山行の2回を含めて5回ほど登った。中でも心に深く刻まれたのは、TUWV卒業30周年と銘打って行われた同期の最初のOB山行だった。あれから21年 … できれば彩やかな紅葉を見たかったが、混雑を嫌って今年6月の梅雨の晴れ間に登る機会を得た。

 何故今かと言えば、築55年の老朽化したくろがね小屋の建替え工事が来春にも始まるらしいので、思い出の詰まった小屋にもう一度泊まりたかったからである。更に、小屋泊まりであれば懇意の山友夫妻(♂横須賀♀秋田出身)でも歩けそうなので、2夫婦4人の病院通い薬漬けヨレヨレ隊の安達太良遠征と相成った次第である。

 RWで薬師岳に上がり、ほんとうの空の下で安達太良山を見上げてから登りにかかる。我々のペースは、休憩込みで標準コースタイム×2という気楽なものだ。山頂でランチタイムを楽しみ牛の背から荒涼たる沼の平を見下ろせば、今更ながらその迫力に圧倒される。その後チンタラ矢筈森まで足を伸ばし、峰の辻経由で小屋に下った。

安達太良山頂(乳首)
沼の平を見下ろす牛の背にて

 小屋の佇まいに全く変りはなかったが、橋本親父さんが若い管理人に代わっていて、ハーモニカ演奏で合唱などという古き良き時代は望むべくもない。夜空に瞬く無数の星は昔の感動そのままで、屋外で冷えた身体を白濁温泉で暖めてまた外への繰り返し。

 翌日は勢至平のレンゲツツジ群生地に遊び、奥岳近くの渓谷遊歩道を探索して帰着した。同行した二人は初めての安達太良山だったので、とても楽しそうに頑張って歩いた。80歳近い高齢にも拘らず山への意欲を失わない姿勢には、常に感銘と影響を受けている。

特徴的な景観のくろがね小屋
外観同様、中の様子も変わらない
山小屋に泊まって、源泉掛け流しの硫黄泉は堪らん
安達太良渓谷自然遊歩道の魚止めの滝
令和元年OB会報NO50より抜粋