山を歩いていると、昨春亡くなった川田君を思い出すことがある。特に一人でとぼとぼ歩いている時に。彼とは随分一緒に山に行ったものだ。彼が一年生の時の吾妻山秋合宿、二年生になってからは旧錬、残雪の鳥海山、夏合宿(南アルプス白根山脈縦走)、最後は秋の飯豊に二人で行った。数年前までは8・9期OB山行に参加してくれていた。
体力があり、中々弱音を吐かないタフガイ、そんな印象が強かったが、数年前のOB山行で酔った勢いか「前田にしごかれた」と冗談半分で言うようになった。聞いてみると、「石野君と3人で行った鳥海山の時に初めてバテタ」と。確かに鳥海山の登りは長かった。朝6時吹浦の海岸を出発し、車道を延々と歩き、標高約1,100mの登山口からは雪上をひたすら登って、ようやく山頂に着いたのは夕方6時。一日の標高差2,236m。私にとっても一日の登り最高記録。確かに疲れたけれど、大きな充実感を味わった一日であった。
夏合宿ではエッセンを担当、いつも暖かい汁物を作り、とにかく皆の腹を一杯に満たしてくれた。口数は多くはないが、ムードメーカー。踏み跡が判然としない、ルート情報がほとんどなかった白根山脈の縦走でも、彼がいるだけでパーティーの雰囲気は、何となく明るくなった。
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