荻原良子さんとの出逢い、そしてオギャ〜との別れ
8期 (昭和44年卒) 相原 敬
 良子さんとの出逢いは、半世紀前のワンゲル時代にさかのぼる。いつからか皆んなに
オギャ〜と呼ばれ、控えめで自己抑制のきいた小っちゃくて可愛い娘という印象だった。お互いに寡黙な人間だったので付き合いは少なかったが、忘れ得ぬ一人として記憶に残った。

 彼女は夫君である拓哉とザイルを結び、非力な身体ながら強靭な精神力に支えられたしなやかなムーブで、国内はもとより海外の岩壁に残した実績は素晴らしいものだった。私の住む高崎にもご夫婦で何度か足を運んでくれて、クライミングや紅葉の山で共に過ごしたことが懐かしく思い出される。

 彼女からクライミングの話を聞いた覚えがないが、それは彼女の奥ゆかしさの一端を物語っている。自慢話は多々あると思うのに、彼女は自らを語らずいつも静かに相手の話を立てる人だった。6年前の初冬に、鷹取山のあと東京湾フェリーに乗って千葉に遊んだのがオギャ〜と過ごした最後の二日間になった。東京湾に沈む真っ赤な夕日が強烈な残像となって記憶に残ると共に、多くの想い出が詰まった掛け替えのない楽しい時間だった。

 人の一生は人格的な触れ合いが本質であり、自己を形成する過程は出逢う人の人格によるところが大きい。良子さんという素晴らしい人と出逢えたことは、私の一生の宝であると思っている。

 山仲間としてオギャ〜を追悼し、在りし日の想い出を心に刻んで生きたい。

高岩に向かう道すがら(2010/5/29)
妙義金鶏山筆頭岩のP2リッジを渡る(2011/7/9)
西上州荒船山の紅葉山行(2013/10/31)
横須賀の家で御馳走になった翌日、千葉の鋸山散策(2014/12/14)
皆んなで眺めた東京湾に沈む夕日(金谷港岸壁から)
令和2年OB会報NO51より抜粋