富山(とみさん)に登ったよ!
12期 (昭和48年卒) 神山 文範

昨年6月末、コロナ禍の中で47年余の会社人生に終止符を打ち、毎日が日曜日の生活となった。楽しみにしていた山々が難しい中、週3−4回の“裏山”歩きが始まった。我家から30分で横浜市最高峰の大丸山(156.8m)に登れ、1時間少々で天園を越えて鎌倉宮にも行けるのだ。まったく低いが、四季の花々や蝶、蝉、鳥、タイワンリスなどと会えてなかなかのヤマである。西には箱根、富士、丹沢(最近よく行く)、秩父などの山々が見えるが、ある日東にも東京湾越しに低いが端麗な双耳峰が見えることに気がついた。

南総里見八犬伝所縁の富山(349.5m)である。登りたいなと同期に声を掛けると、蔭山と松井が賛同。昨年12月に岩井(松井は小学校の臨海学校で行ったと)に一泊して登る計画を立てたが、コロナの急激な感染増加で中止せざるを得なかった。今年になっても晴れた日に大丸山頂上から富山を眺めていたが、松井から昨年地図も買ったので今年は是非登りたいとのメールがあり、10月半ばになり急に感染が一段落したので、同期に改めて声を掛けたところ、昨年と同じ3人で12月6日に岩井に一泊して、7日に登ることになった。

 最近の天気予報は従来とは変動パターンが違うのか当たらないことが多いが、魚料理とビールで話し込み、好天を祈って寝た夜は予報の雨もなく、翌朝も予報に反して青空も少し見える好天であった。人一人いない岩井海岸(三浦半島がかすかに見えた)を回って、菜の花や水仙の花を見ながら福満寺を目指した。そこから急な坂道を登り始めて約1時間、仁王杉に至り、苔むした階段と崩れ掛けたお堂の横を登り南峰往復。さらに進んで三角点、皇太子(現天皇)ご一家の登山記念碑と木製の展望台のある北峰頂上広場で綺麗に咲いた水仙を楽しみ、北峰と南峰の間の八犬士終焉の地で岩井の街を見下ろしながら大休止し、同じ道を下山した(もう一つの伏姫籠穴ルートは道が崩れて通行止め)。途中、仁王杉で中学生一行(先生と生徒で30名くらい)が登ってきたが、これがこの日唯一の人との出会いであった。

 楓の紅葉が残り、藪柑子は赤い実をつける一方で、水仙は咲き、蛇苺も二つだけ赤い実をつけていた。まさに晩秋と早春が混在した、静かななかなか魅力的なヤマであった。

令和3年OB会報NO52より抜粋