山のお宝
4期 (昭和40年卒) 大東磐司こと 小原 佑一

 ワンゲルを卒業して既に50余年も経つと周りから断捨離や終活の圧力を感じるようになってきます。しかし人にはなかなか捨てられない宝物があります。
私の山に関するお宝は、

 まずピッケルです。現役時代、ピッケルと言えば仙台の山内、札幌の門田が垂涎の品でしたが山内は高齢のため殆ど作られていませんでした。門田の製品も高価で学生の身にはちょっと手が出ませんでした。

 昭和35年東北大山岳部員が北穂で滝谷側に転落して遭難死されました。その後ヘッド部分が取れたピッケルのシャフトが見つかり金属材料研究所で調査したところヘッドの部分を溶接したもので、溶接部分が破損したと判明しました。

 山内ピッケル以上で近代的なピッケルを作ろうと金属材料研究所と東洋刃物が共同で取り組み、「仙台ピッケル」という製品を完成させました。一本一本手作りというやり方で当初50本、その後増産しましたが合わせて200本まで生産しましたが結局生産終了となってしまいました。初めの50本には、無事山から帰って来られるようにと「鳩のマーク」がつけられましたが弱々しいというのでその後は伊達藩の家紋をマークに変更した。私のには「鳩のマーク」とNo.36の刻印が押されています。タモ材のシャフトで全長85cm、その後、フランスに出張したおり購入したピッケルにバトンタッチして、現在は大切に保管しています。

仙台ピッケル ヘッド
仙台ピッケル 鳩のマーク


 次は動物の頭蓋骨! 奥新川から春先、沢を辿っていた時、水の中に白いものを見かけました。まだ少し肉片などがついているカモシカの頭蓋骨でした。クリーンアップしようと薄いで薬剤で軽く処理をしたのですがそれでも強すぎたのか失敗してオジャンにしてしまいました。就職してしばらく経った初夏、八ヶ岳の立場川に入りました。上流の詰めを諦めて戻る途中、岩の間に白いものが!今度は完全に白骨化して乾燥したカモシカの頭蓋骨でした。ヘルメットに入れて持ち帰り、現在はケースに入れて飾ってあります。カモシカは特別天然物だし、国立公園内だけど時効ってあるのかな?


カモシカの頭蓋骨


 カモシカではなく、日本鹿の雄の角は春先根元から落ちます。したがって相当数の角が山の中には落ちているはずですが、私が拾ったのは2、3本わずかしかありません。丹沢の大きな沢を歩いている時、岩の間の砂地から角の一部が飛び出していました。落ち角のつもりで引っ張ってみると周囲の地面がごっそりと持ち上がってもう一方の角、さらに頭蓋骨まで出てきました。長さ60c mの三枝掛けの立派な2本の角がはえた30cmの頭蓋骨!!!逆さにして肩に背負って、予定通り山を歩き、バス、電車を乗り継いで帰宅しました。さぞかしものすごい姿だったでしょう。台をつけて家の玄関に飾っていたのですが、気味が悪いと言われ現在は自室の壁に落ち角と一緒に飾ってあります。

日本鹿の頭蓋骨と落ち角


 このほか、日本鹿の雌、猪、トド、シマフクロウなどの頭蓋骨を持っています。
「動物の頭蓋骨を集めています」というと、「人の頭蓋骨は?」と聞かれます。
「持っています。ただ残念ながらお見せすることができません!」... が私の答えです。

令和4年OB会報NO53より抜粋