岩壁におけるレスキュー技術のもたらしたもの
8期 (昭和44年卒) 佐藤 拓哉

 レスキュー技術と言えば、遭難者を救助する特殊技術というイメージが強く、誰でも思い浮かべるのが消防のレスキュー部隊であろう。しかし、

22年前、オギャーと共にスクールに入ってクライミングを始めたが、翌年からは二人だけで谷川岳や北アルプスの岩壁を登るようになった。失敗を繰り返しながら経験を積むうちにレスキュー技術の重要性を感じ、ガイド研修のレスキュー講習を数回受けた。ザイルパートナーであるオギャーとは、鷹取山で20回ほど練習を繰り返した。これが、黒部の丸山東壁など未知の大岩壁へ二人だけで挑戦するバックボーンとなった。岩壁でかなりのトラブルがあったとしても、自分たちで対応できる能力を持つことは、安全なクライミングにも繋がることを実感した。

12年前、オギャーが心臓病のため思うように登れなくなった後、いろいろな人と岩壁を登るようになったが、その人達にもレスキュー技術を教えた。レスキュー講習を受けることを谷川岳や北アルプスの岩壁に連れて行く条件にした。

日本にも多くのクライマーがいるが、レスキュー技術を身につけている人は驚くほど少ない。数年前、穂高岳・屏風岩でビバーク中のクライマーがテラスから転落し、救助隊が来るまで岩壁にぶら下がったまま夜を過ごしたという事故があった。屏風岩は日本を代表する岩壁の一つであり、そこを目指すクライマーとしては信じられない話であった。

最近はいくつかの山岳会で中心的に活動している人達との付き合いが多くなった。岩壁で知り合ったクライマーの多くは、レスキュー技術の必要性を認識しているものの、なかなか習う機会がないということであった。また、講習を1回、2回受けても身につくものでもない。そんなことから、三つ峠、広沢寺(こうたくじ)、鷹取山などで随時講習を行い、レスキュー技術の普及を図ってきた。1〜3枚目の写真は、先日、沢登りで有名な山岳会のメンバーに対して鷹取山で行ったレスキュー講習である。


 これまでに30回を超える講習会を開き、40人近くのクライマーに教えてきた。TUWVの現役に対してもロープワーク講習を行った(4枚目)。
オギャーと二人で研鑽した岩壁登攀の経験に加え、このレスキュー技術があったからこそ、喜寿を目前にした今でも、多くのクライマーが私の周りにいることに幸せを覚える。

令和4年OB会報NO53より抜粋