クライマーを育てる喜び
8期 (昭和44年卒) 佐藤 拓哉

 「ハーレムライン」 ・・・ 私の大事なグループラインである。正式な名称は「夏の城ケ崎でクラックを登る」というものであるが、いつしか「ハーレムライン」という愛称で呼ばれるようになった。ハーレムという名のとおり、男は私だけであり、他の20数名は女性ばかりである。

 昨年の会報に「多くの人に伝えるクライミング」というタイトルで投稿し、私の弟子の女性が大キレット・長谷川ピークで滑落して死亡したのをきっかけに、彼女が生前、城ケ崎に連れてきた女性二人を育て始めたことを報告した。結果は、その二人に留まらず、岩場や氷瀑で知り合った人、誘ってきた友達など雪ダルマ式に人数が増え、今では女性が35人程、男性が25人程と60人を超える一大グループに成長した。まだまだ増えそうな勢いである。クラックを登れるようになりたい人、アイスクライミングのレベルアップを図りたい人、レスキューを覚えたい人など様々である。

ネット社会ならではのこと、10ケほどのグループラインを駆使し、東京、千葉、埼玉、群馬、神奈川、静岡、愛知、三重、大阪と広い範囲から集まっている。8割くらいの人は山岳会に所属しており、現在10を超える山岳会の人が来ている。新人だけではなく、山岳会の中心メンバーも来ている。

【初心者でもリードクライミングができるように】
 クラックを登ったことのない初心者を、初級ルートとは言え、一日でリードクライミングできるようにした。これまでに数人ほどの人が成功している。リードとは、自分でクラックにカムという道具をセットしてロープをクリップし、落ちてもそこで止まるようにしながら登るものである。ガイド講習では、リードクライミングができるようになるまで何年かかかるのが普通である。登る前に、カムのセットの仕方を教えるという逆転の発想の賜物である。「落ちないように登る」のではなく、「落ちても大事にならないようにして登る」という発想の転換が功を奏している。

【ロープワークとレスキュー技術のレベルアップ】
 これは最も大事にしていることであり、山岳会の中心メンバーも来ている所以である。マルチピッチの登攀がスムーズになり、時間短縮を図ることができ、万一のトラブルや事故にも対応できるようにしたい。これまでの講習会は大小合わせるとまもなく100回を数える。先日も仙台に行き、現役にも沢登に必要なロープワークを教えたばかりである。

【徹底した育成】
 メンバーが60人以上いるといっても、いつもみんな参加する訳ではない。特に希望する人には徹底した個人指導をしてきた。この冬シーズンだけで17回も一緒に氷瀑を訪れ、八ヶ岳の南沢大滝をリードできるようになった女性もいる。また、クラックやフェースを登り込み、高難度のルートをリードできるようになった女性もいる。成功した瞬間、本人はもちろん嬉しいだろうが、私自身もそれに負けない程の喜びを覚える。

【彼らはみんな仲間】
 岩場ではよくガイドと間違えられる。全てを無料で行っており、ガイドでも山岳会でもない。無料とは言え、内容はガイド講習や山岳会の講習をはるかに凌ぐものであり、それがみんなの喜びに繋がっている。みんなの喜びがそのまま私自身の喜びにもなっている。オギャーと二人で研鑽したクライミング技術や経験を、80歳間近になった今でも多くの人に伝えることができるのはこの上ない幸せである。みんなは私を「師匠」と呼んでくれるが、私にとってみんなはかけがえのない仲間なのである。

初めてのクラックのリード(城ケ崎)
南沢大滝のリード(八ヶ岳) ハングしたクラックのリード(城ケ崎)
忘年会のクライミング風景(城ケ崎)
令和7年OBG会報NO56より抜粋