多くの人に伝えるクライミング | ||
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12月7日、8日の二日間、伊豆の城ケ崎海岸でクラッククライミング&忘年会を行った。男性7名、女性9名が、東京、千葉、埼玉、神奈川、静岡、三重、大阪から集まった。集合写真を見て、その人数の多さに改めて驚き、喜びを覚えた。 54歳でクライミングを始めて間もなく25年を迎える。最初の十数年は、もっぱらオギャーと二人で追浜の鷹取山や湯河原・幕岩、城ケ崎などで技術を磨き、谷川岳・一の倉沢や幽ノ沢の岩壁、北アルプスの錫杖岳・前衛壁、北穂高岳・滝谷ドーム、黒部の丸山東壁、八ヶ岳・大同心&小同心などの大岩壁を登った。冬には八ヶ岳や南アルプス、西上州の氷瀑を渡り歩いて登った。シャモニー(フランス)やドロミテ(イタリヤ)、エルチョロ(スペイン)など海外の岩壁も登った。オギャーを守らなければという思いもあって、何度かガイド養成コースのレスキュー講習を受講し、その技術をオギャーにも伝えた。本当によきザイルパートナーであった。 オギャーが病気で登れなくなってからは、新たなパートナーを育てながら多くの大岩壁を登り、「日本のクラシックルート」のビデオも25本制作することができた。同時に、子供を含め、いろいろな人にクライミングを教え、いくつかの山岳会の人達にレスキュー技術を教えてきた。状況を大きく変えたのは、昨年のOB会報でも紹介した女性の大キレット・長谷川ピークでの滑落死亡事故であった。プライベートに一生懸命育ててきた女性の事故は衝撃的なものであった。彼女が生前、城ケ崎に女性二人を連れてきたことがあった。何故連れてきたのかは聞いていないが、その女性二人も育てて欲しかったのだろうと思い、それを無言の遺言としてその二人に連絡を取った。 それ以来、その二人に留まらず、岩場や氷瀑で知り合った人、誘ってきた友達など雪ダルマ式に人数が増えてきて、今では女性が15人程度、男性が10人程度の一大グループに膨れ上がった。クラッククライミングを覚えたい人、アイスクライミングのレベルアップを図りたい人、レスキューを覚えたい人など様々である。8割くらいは山岳会に所属しており、現在9つの山岳会の人が来ており、中には山岳会の中心メンバーもいる。定期的に行っている三ツ峠でのレスキュー&ロープワーク講習会には10人が集まった。 78歳も半ばを過ぎ、80歳も手が届きそうになってきた。去年の7月に岩場で転倒して痛めた左腕が完治しないこともあるが、年齢からくる登攀能力の衰えを痛感している。悔しいが、それが現実である。しかし、幸いなことにそれに反比例するように教える能力がレベルアップしているように思える。 最近の喜びは、城ケ崎でクラックを登ったことのない初心者を、初級ルートとは言え、一日でリードクライミングできるようにすることである。これまでに数人成功している。リードとは、自分でクラックにカムという道具をセットしてロープをクリップし、落ちてもそこで止まるようにしながら登るものである。私とオギャーは、リードできるようになるまで数年かかった。ガイド講習でも、リードできるようになるまで何年かかかるのが普通である。登る前に、カムのセットの仕方を教えるという逆転の発想の結果である。また、「落ちないように登る」のではなく、「落ちても大事にならないように登る」というように教えているのも発想の転換であり、功を奏している。 最も大事にしているのが、ロープワークとレスキュー技術のレベルアップである。これらによってマルチピッチの登攀がスムーズになり、時間短縮を図ることができ、万一のトラブルや事故にも対応できるようになる。これまでの講習会は大小合わせると70回以上に及ぶ。 これら全てを無料で行っている。無料とは言え、内容はガイド講習や山岳会の講習をはるかに凌ぐものであり、だからこそみんなの喜びに繋がっている。みんなの喜びがそのまま私自身の喜びになっている。オギャーと二人で研鑽したクライミング技術や経験を、この歳になっても多くの人に伝えることができるのはこの上ない幸せである。 |
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16人も集まった2024年の忘年クライミング | ||
三つ峠・屏風岩におけるレスキュー講習 | ||
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