コマクサを見に登った、ちょっとした夏山
4期 (昭和40年卒) 大東磐司こと小原 佑一

 長野県茅野市の限界集落の耕作放棄地を再開拓(?)して、狭いながらも畑の真似事をやっている。根雪が消え、農作業をスタートしたのが4月末、梅や桜の蕾も緩み始めて畑の脇にタラの木があり、ちょうど芽が出てくる頃であった。まずはジャガイモを植えつけて、ふと見るとニホンカモシカがノソノソと前の空き地を歩いていた。

 この集落の氏神様は鹿狩神社で、元々諏訪の殿様の鹿狩りの猟場であったところを、370年前に新田として開発された土地である。現代でもシカが多く、せっかくの作物を荒らされて農家はとても困っているが、カモシカまで山からおりてきて集落内をうろついているとは・・・・・

庭先のカモシカ

 八ヶ岳の裾にいると言うのに、周囲の家や森にさえぎられて、私のところからは霧が峰、蓼科山以外山らしい山は、はるか彼方に中央アルプスを小さく望むくらい。ただちょっと歩いて集落の外に出れば、八ヶ岳連峰はもとより南、中央、北アルプスと見ることが出来る。体力的にもう無理は出来ないので、天気の様子を見計らってチョコッと山を歩いてみたくはなる。

 2年前の8月、お盆を過ぎて、美濃戸に車を置いて赤岳鉱泉、硫黄、横岳、赤岳、行者小屋とメインルートの稜線を廻ったとき、枯れ残った惨めなコマクサの花を見た。今度は、7月、梅雨の晴れ間をねらってコマクサを見に硫黄まで登ってみた。

 前回、赤岳鉱泉から急な樹林帯の斜面を登り、尾根に飛び出した赤岩ノ頭で、反対側のはるか下にオーレン小屋が小さく見えた。今回は別荘地の奥の桜平に車を置いて、夏沢鉱泉、オーレン小屋へ、ここから赤岩ノ頭へ登った。前回の赤岳鉱泉からの登りほどきつくない。樹林帯を抜け、赤岩ノ頭からハイマツや岩のごろごろした登山道を硫黄の山頂に着くと、急に人が多い。さすが南八ヶ岳稜線のメインストリートの第一峰目。硫黄岳の三角点は、縦走路にある頂上と書かれたケルンから数十メートル離れているだけだが、寄り道する人はほとんどいない。三角点の脇に崩れた避難小屋の残骸と石積みが残っている。半世紀昔の現役時代に、蓼科から赤岳まで稜線を歩き、県界尾根を下って信州峠、秩父に入って雲取まで歩いた時、この石垣の中でオカンしたことを思い出した。

 硫黄岳から稜線を少し石室の方に下ると、登山道の両脇にコマクサが小さな花をつけている。今回はちょうど良いタイミング、天気も上々、たっぷり楽しませてもらった。

稜線のコマクサ
コマクサの虫

 登山口近くで、「高山植物を鹿から守るため、電気柵を設置しているので注意してください!」との警告板があった。2年前も電気柵は設置されていたが、当時は現地に小さく「危険!」と書かれていただけだった。伊豆での電気柵による死亡事故以後、このような警告が行なわれるようになったと思われる。

 最近、南アルプスなどでも、シカが高山地帯まで登ってきて高山植物を食べてしまうということをよく聞く。これって野生動物による“農業被害”??”環境破壊”??”自然破壊”??

 丹沢ではシカに下草を食べられ、表土が露出して斜面の土砂崩壊まで起きている。最近、シカの天敵“オオカミ“を復活(導入)しようという話が出ているという。もしそうなったら、オオカミは肉食獣だから雑食のツキノワグマより危険かも・・・

 下りは夏沢峠に出て、オーレン小屋、夏沢鉱泉経由で桜平の車に戻った。久しぶりの日帰り山行でした。

平成28年OB会報NO47より抜粋